退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

越智道雄・町山智浩『オバマ・ショック』

オバマ・ショック (集英社新書 477A)

オバマ・ショック (集英社新書 477A)

題名で「オバマ」と謳っているが、直接言及しているのは最後の2章だけで、全体の3割弱といったところか。残りの紙面では、オバマに至るまでアメリカの辿ってきた道筋を、社会、宗教、文化などの多様な視点で俯瞰している。対談形式だということもあり、刺激的な記述で最後まで興味深く読んだ。面白い。

章ごとに注釈が付いているのも読みやすいし、これは理解を深めるために調べ物をする際にも役立つだろう。欲をいえば、人名などの固有名詞はスペルアウトしてほしいところ。この対談にアメリカ映画が頻繁に登場するのは、町山さんらしいが、これにもきちんと注釈が添えられているのは、映画好きにはうれしい。

また、対談でアメリカを語っているのとは別に、町山さんが自身のことを語っているところにも関心を持った。渡米した理由、父親の思い出、米国で家を買った話を買っており、身近の感じることができだ。

町山さんはラジオ番組では「映画とエロの伝道師」などといい、インテリであることを意図的に隠しているようにも思えるのだが、この本では、そうした隠蔽工作をすることもなく、インテリぶりをほどよく発揮している。営業用のキャラは大丈夫なのかとも心配するが、最近では『文藝春秋』など権威雑誌にも寄稿しており、路線変更したのだろうか。