退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

夏目漱石『それから』

それから (新潮文庫)

それから (新潮文庫)

なんとなく読み返してみた。夏目漱石の前期三部作のひとつ。あらすじは次のとおり。

明治後期。主人公・代助は、東京帝大卒で高等遊民と呼ばれる知識人。30歳になるが定職を持たず、裕福な実家に頼り自由気ままな生活を送る。一方、学生時代からの親友である平岡は卒業後、関西で就職するが失敗して東京に戻る。平岡の妻・三千代は、かつて代助が義侠心から平岡との結婚を斡旋した女だった。やがて次第に三千代を愛するようになった代助は、平岡に三千代を譲るように言い、実家から勧められた政略的な縁談を断る。やがて平岡からの手紙により、三千代との一件が実家に知れて、代助は見放される。

旧刑法には姦通罪があり、不倫は現在よりも倫理的・社会的に重大事だったのだろうが、もっとうまくやればいいのに不器用だと思った。代助と三千代の成り行きについては、この小説では言及されていないがおおいに気にはなる。実家からの経済的援助が途絶えることになり、現実に絶望するあたり描写は凄まじい。まあ、とっとと働けよ穀潰しが、とも思ったが。

高等遊民」は漱石の造語だが、結局、いまでいう「ニート」みたいなものかな。まあ高等じゃないのもいっぱいいるけど―。

1985年、松田優作主演で映画化されているが未見。