退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『皇帝のいない八月』(1978)

新文芸座で「皇帝のいない八月」(山本薩夫, 1978年)を鑑賞。山本薩夫監督特集の一本。

自衛隊による軍事クーデターにリアリティがどれだけあるかはわからないが、見どころが多く、最後まで楽しく観ることができる。とはいうものの、設定の基本において疑問がある。列車を占拠し乗客を人質にとって、首都に乗り入れるという卑怯な行為で、右翼連中の大儀が立つだろうか。


皇帝のいない八月(予告)

渡瀬恒彦三國連太郎渥美清らの芸達者の出演者たちに熱演がすばらしい。だが製作者の意図とは違うかもしれないが、吉永小百合の美貌がこの映画の一番の見どころではないだろうか。この映画には吉永が強姦されるような濡れ場もあるが、せいぜい肩が露出する程度のおとなしいものだ。ま、とにかく吉永の美しさが際立っている一本なので、一度見てほしい。

あと兵器マニアには、大量の64式自動小銃などの自衛隊装備がうれしいかも。

余談だが、映画のラストで高橋悦史の「ウッチェロの勝利の絵ですね」というセリフがある。調べてみると、パオロ・ウッチェロの「サン・ロマーノの戦い」のなかの1枚のようだ(画像)。機会があれば、映画で確認してみたい。