杉原千畝は、第二次世界大戦時のリトアニアでビザを発給することで、ナチス政権下のドイツの迫害を受けていた6000人にのぼるユダヤ人を救ったことで知られている。この本は、彼のこうした行為を平易な英語で紹介したテキストである。
6000人の命のビザ The srory of Chiune Sugihara (Sanyusha New English Course)
- 作者: プロジェクト・チウネ
- 出版社/メーカー: 三友社出版
- 発売日: 1992/07
- メディア: 単行本
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40頁足らずの初学者向けのリーダーの本なので、記述のなかには、厳密さに欠けたり単純化されたりしたことあるだろうが、2つほど考えさせられることがあった。
ひとつは、外務省からの命令に反して、独断で大量のビザを発給したことの是非についてである。これは外交官としては、明らかに間違った行為だし、結果として国益を大きく損なう恐れもあったはずだ。人道的な見地だけから、この行為を全面的に賛美していいものだろうか。
もうひとつは、帰国後の外務省の処遇である。この本のなかでは、外務省高官に呼び出されて、「とんでもないことしてくれたね。ここには君のポストはないよ」(意訳)と言われて、免官されている。調べてみると、退職金や年金も出ており、懲戒というわけではないようだ。規模縮小に伴う、免官ということになっているようだ。それではリトアニアでの命令違反は罰せられなかったのかという疑問が残る。それで組織としての体面を保つことができるのだろうか。
読後、彼について調べてみると、この本では触れられていない事実もわかった。まず、最初ロシア人と結婚していたこと、そして正教会から洗礼を受けていたことだ。彼の行為が信仰上の信義から生じたかもしれないとも考えてみた。しかし、それでも職務上の義務に反してもいいことはならないだろう。