退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

林壮一『アメリカ下層教育現場』

面白かった。アメリカ在住のノンフィクションライターである筆者が、ネバダ州リノ市の高校(チャータースクール; charter school)の教壇に立つことになる。その学校はいわゆる底辺校で生徒たちのレベルは最低である。また彼らの家庭環境も想像を絶して過酷だ。筆者が教師を勤めたのは半年であるが、その間の生徒たちとの交流をとおして、かの地の教育格差問題が浮き彫りとなる。授業の様子も臨場感が溢れている。

アメリカ下層教育現場 (光文社新書)

アメリカ下層教育現場 (光文社新書)

その後、筆者はユース・メンタリング(Youth mentoring)という活動でボランティアとして小学生のメンターとなる。そのメンター向けの導入トレーニングで20種類の褒め方が紹介されている(197p)。「素敵だね!」「素晴らしい考えだね」「いい仕事したよね」などなど。例に挙げたのは、それぞれ”Wonderful!”, “Good idea.”, “Good Job”かなと思いながら読んだが、できればこれを英語でも紹介してほしかった。

この本を読んでいくと、リノ市の教育問題は日本よりも、ある意味深刻ではないかと思ったが、一方このような問題に取り組む市民活動が存在しているのが米国らしい。また教育者たちの情熱も十分に感じられたのは救いであろう。教室に掲げられていた、”What you believe in yourself, Anything is possible.”というキャッチ(246p)が印象に残った。

本書は筆者の体当たりによる貴重な体験に基づくノンフィクションで、米国社会の一面を鮮やかに切り出してみせてくれていて興味深い。筆者のバイタリティに驚嘆しながら、一気に読んでしまった。そんな筆者が日本の教育について思うところを聞いてみたいなと感じた。

ちなみにリノ市はネバダ州の北西部。下に地図を示す。