退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

中野京子『怖い絵』(2007年、朝日出版社)

西洋絵画を題材にした美術エッセイ集。新聞の書評で見かけ、その後「○○の怖い曲」という動画に表紙の写真に使われていた。どのような本かわからずに読み始めたが、知的なエッセイとして面白い。

怖い絵

怖い絵

各エッセイは、筆者の学識に裏打ちされているものの、詰まるところ個人的な趣向つまり思い込みによるものが多い。まあそれ自体が味を醸し出しているからこそ、おもしろいのだが。そもそも「怖い」というのは、主観的な感情なのだから、それでよいのだろう。

勝手にベスト3を選んでみた(順不同)。

特に、上の三番目のエッセイは、高齢化社会に照らして考えるところが多い。石原慎太郎都知事の「ババア発言」(wikipedia:ババア発言)を思い出したが、これはさすがに論外としても、特に男性には、年をとった女性を忌む思いが深層心理にあるのは間違いないだろう。

この本の難点といえば――コスト面での制約があるのだろうが――絵画の印刷がショボイところである。各エッセイのメインの絵画は低画質ながらカラーだが、そうでない他の絵画はモノクロの小さな画像なのは残念。エッセイで細かい描写について解説があるが、本にある写真が不鮮明なのでストレスが溜まる。

例えばボッティチェリの作品は四枚一式なのにカラーは一枚だけ、という具合にあまりにもさみしい。そういう時は、ネット上で絵画の画像を捜してPC上に大きく表示しながら、エッセイを読むというのがお勧めだ。そのうち豪華装丁で特別版を出して欲しいものだ。

私は、有名な絵が都内にやってくれば美術館に出かけてみる程度のミーハーであるが、聖書やギリシャ神話などの素養があれば絵画を一層楽しめるのだろうとも思った。