退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

石田伸也『ちあきなおみ 喝采、蘇る。』

ちあきなおみは、最近のマイブームである。「喝采」「四つのお願い」などヒット曲や「タンスにゴン」のCMシリーズは知っていたが、歌がうまいなと思う程度でこれまでは特段の思い入れはなかった。

その後、動画サイトで彼女の映像を見て魅入られた。歳をとってから心に響く歌というのもあるらしい。そんな彼女の来歴に興味を持ち、この本を手にとった。米軍キャンプから始まる下積み時代、デビューから大スターへの躍進そして葛藤、郷えい治との結婚・死別といった半生を、さまざまの人との関わりのなかで描かれていて読みごたえがあった。なかでも芸名の由来、デビュー時のキャッチ・コピーは「魅惑のハスキーボイン」であったというエピソードは初めて知った。また豊富な秘蔵写真も貴重である。ただ巻末のシングルディスコグラフィがカラーだとさらによかった。

この本自体が復帰を願う熱烈なラブ・コールになっている。図書館で彼女の音源を求めたが、ベスト盤には相当数の予約が入っていて根強い人気をうかがわせる。もう一度、彼女のライブを観たいというファンは多いが果たして叶うだろうか。

余談になるが、郷えい治は以前足繁く通った名画座でよく上映されていた「東映ピンキー」での常連男優で、個性的な風貌が印象に残っている。そのことも、この時代を身近に感じる一因かもしれない。