退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『オッペンハイマー』(2023) / 「原発の父」で知られる物理学者の伝記映画

先日、出張先のシネコンで映画『オッペンハイマー』(2023年、監督:クリストファー・ノーラン)を鑑賞。「原爆の父」として知られ、広島・長崎に投下された原爆の開発を率いた理論物理学者・ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた伝記映画。主演はキリアン・マーフィー。

アメリカでは2023年夏に公開され注目されたが、日本人のとってはセンシティブな内容だとみなされたのか、日本公開は未定だった。その後、作品がアカデミー賞を総なめにして、ようやく日本公開が決まったいわくつきの映画。


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とにかく観るのにエネルギーが必要な作品。上映時間が3時間であることに加え、時間軸が複雑に交錯し、登場人も多い。一度見ただけでは、すべてを理解することは無理。まあ、そのあたりもノーラン監督らしいとも言えるだろう。

映画のクライマックスは、原爆を実際に砂漠で爆発させる「トリニティー実験」。カウントダウンしていく際の緊感は強烈。さらに爆発時の効果音などは映画館ならでは迫力だった。このシーンに限らず、この映画は効果音と劇伴が素晴らしいので、ぜひ映画館で鑑賞することをお勧めしたい。

また原爆が完成する前にナチスドイツが降伏してしまい、「じゃあ日本でいいんじゃね?」とばかり、日本での目標を捜し始めます。このあたりは日本人なら「え?」という感想を持つことだろう。ただし、映画では広島・長崎の被爆地の様子が直接描かれることはなく、オッペンハイマー自身もラジオで原爆が使われたことを知ることになるのは意外だった。

原爆は科学者の手を離れ、政治的な道具になったわけだ。その後、罪悪感を抱いたオッペンハイマーは水爆開発に反対したこともあり、当局ににらまれ「赤狩り」の標的となる。そのあたりからは映画は会話劇になり、字幕を追うのも一苦労するほどの忙しさ。疲れていたせいもありツラタンだった。

映画の顛末は書かないが、鑑賞後、どっと疲れたというのが率直なところ。既述のとおり、一度見ただけでは理解不能。ネットに落ちてきたら再度鑑賞したい。

個人的には、学生時代は実験が苦手でいじめられていたオッペンハイマーが、実務家としてリーダーシップを発揮して原爆開発チームをまとめて計画を完遂するほどのスキルを身に着けた経緯をもう少し詳しく見たかった。

映画を見たのは平日夜だったが館内はガラガラだった。興行成績は芳しくないと思われるので、映画館で見たい人は早めに見ることをオススメします。

オッペンハイマー クリストファー・ノーランの映画制作現場